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飛距離と角度

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2008.11.20
名前変換無しのブログ用王様連載【call a name】10話です。
隠してあるので読みたい方は「つづきを読む」で開いてください。

この話しで完結します。
最後まで読んでくださった方、ありがとうございます。

 

 


call a name 10

 

 

目の前に現れたのは、少しふっくらした女性だった。
どんな姿になってもと俺は言ったが、正直今の方が好みだとは口が裂けても言えない。
きっと、抱き締めたら柔らかくて、抱き心地がいいのだろう。
そんなことを思ってしまって、慌てて思考を切り替える。
今はデュエル中だ、そんなことを考えている場合じゃない。
「ハーヴェストの効果発動、戦闘で破壊されて墓地にいったから、
 墓地にあるカウンタートラップを手札に・・・神の宣告を手札に加えるね」
「ああ」
今までと変わらないはずのアテナとのデュエル。
違っているのはアテナの体型と・・・声もちょっと大人びているだろうか。
それと・・・俺の焦りだった。
デュエルで負けることは無いが、どうしても視線がアテナに向いてしまう。
「きたー!!! 天空の聖域があることにより、
 パーシアスを生贄に捧げてネオパーシアス召喚!
 ライフポイントいくつだっけ?」
「3600」
「私のライフは5000だから・・・えっと・・・電卓・・・」
「ネオパーシアスの攻撃力は3700だな」
「暗算早いね・・・じゃあネオパーシアスで裏守備のモンスターを攻撃!
 貫通能力があるのを忘れないでね」
「分かっている。 攻撃宣言をしたな?」
ネオパーシアスを召喚できたことと、攻撃力が上がったことに喜んで居たアテナは、
俺の言葉に固まる。
「えっと・・・やっぱり攻撃はやめとく!」
「遅いな、取り消したいなら・・・」
フィールドを飛び越えて、俺はぐっとアテナに顔を近づけた。
「俺にキスしてくれたら取り消してもいいぜ」
「なっ?!」
もうやめたんだ。
どうやっても俺の気持ちはアテナに向いてしまっているし、
今更消すことも隠すこともできない。
だから、アテナへの気持ちを素直に出すことにした。
戸惑うアテナは顔を真っ赤にして驚いているけれど、
そんな表情もカワイイと思ってしまうのだから、
きっと俺はアテナのことをとんでもなく好きなんだろう。
だって、本当の笑顔を見せてくれるようになったから。
嬉しくて、嬉しくて・・・。
「子供が何言ってんのよ!!」
「3000歳で子供か?」
「3000歳で童貞って、ある意味かわいそうよね・・・あ、ごめん、何でも無い」
「・・・」
ど、童貞・・・!
確かに俺は経験が無い・・・だがいずれは・・・!
チクショー!!!
俺の後ろで相棒がくすくすと笑っていた。
『相棒、笑うことないだろ』
なんだか悔しかったので心の中で言ってみる。
(だって本当のことだし。
 きっとキミはずっとアテナちゃん・・・じゃなかった、アテナさんに勝てないよ)
『・・・』
相棒の言うことがあまりにもリアルすぎて反論もできやしない。
そもそも、人間の三大欲求と言うモノが俺には余り無いのだが、
それとは別の欲求が存在することを実感した。
例えば、デュエルで負けたくないとか。
教えて吸収の速いアテナとのデュエルは楽しいとか。
たまに相棒が城之内君から借りている本は何なのか気になるとか。
そして、目の前で手札とフィールドを睨めっこしているアテナを抱き締めてみたい、とか。
ここまで人間としてリアルな欲求と言うのは、
自分が生きているのだと感じさせてくれるシナジーだ。
俺にキスしてくれないなら、俺がしてもいいんだ。
けれどもそれじゃあなんかな・・・。
俺が負けたみたいだろ。
「顔が怖いけど?」
「顔は元からだ」
「じゃあ、何で眉間に皺が寄ってんの?」
「・・・元からだ」
結局俺のトラップが発動してアテナのネオパーシアスは墓地へ。
俺の勝利でデュエルを終えるとアテナが一言断って店から出た。
タバコを吸うらしい。
25歳のアテナはタバコを吸うし、酒も飲める。
競馬だってパチンコだって行けるのだ。
俺とは違う、大人。
僅かな壁を感じて、俺はシャッフルしていたデッキをテーブルに置いて、
外の灰皿がある場所でタバコを吸っているアテナの隣に立つ。
アテナはタバコの煙が俺に来ない様に吐き出しながら。
「どしたの?」
俺だってタバコくらい・・・。
アテナの腕を掴んで持っていたタバコを奪い、そのまま灰皿へ揉み消す。
「ああ! 火点けたばっかりなのにもったいn」
言い終わる前に、俺は彼女の唇を塞いで居た。
ただ重ねるだけの、子供染みたキス。
本当はもっと重ねて奥まで求めて、絡めて吸い上げて噛んでやりたい。
けれど、今の俺にはこのくらいのキスでいっぱいいっぱいだった。
加速する鼓動が耳元で鳴り響き、熱くなる顔を見られたくなくて唇を離して顔を背ける。
「あ、あの・・・さ。 ちょっといきなりすぎない・・・?」
「・・・お前がキスしてくれないから」
だから俺からしてしまったんだ。
ぎゅうっ
「?!」
俺はびっくりして身体が硬直した。
柔らかい何かが俺を包み込んで、ぎゅっと抱き締めて・・・。
良く見たら、アテナが俺に抱き付いていた。
「!!!」
ちょっ な、何だこの柔らかさは!!
暴走しそうな心を必死で抑えながら。
「顔真っ赤だよ?」
「分かってる!」
それでも、好きと言う感情は厄介で、止めることなんてできない。
だから俺は、抱き付いてきたアテナの背中に恐る恐る腕を廻す。
アテナも恥ずかしいのか、俺の目を見ようとはしない。
ああ、こんなにも・・・。
ぎゅうと抱き締めて、アテナの首筋に顔を埋める。
愛おしい・・・。
「好きだ。 ・・・離したくない・・・」
「・・・うん」
俺の背中に廻ったアテナの腕に力が篭もり、喜びがじわじわと身体を侵食していく。

 


どうして忘れてしまったんだろう。

どうして忘れることができたんだろう。

こんなにも愛しくて離れられない存在を。

どんな未来が来ても、俺は絶対にアテナを離さない。

「私の本当の名前は・・・───」

囁く事を許され、俺はそっと彼女の耳元で名前を・・・。

 

 

俺の名前は───。

 

 

 


終わり

最後までお付き合いいただきありがとうございました。m(_ _"m)ペコリ
今度はもっと決闘を中心にしたSSを書ける様に心掛けたいです。

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