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飛距離と角度

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2008.11.18
名前変換無しのブログ用王様連載【call a name】08話です。
隠してあるので読みたい方は「つづきを読む」で開いてください。

いよいよ大詰め。

 

 


call a name 08

 

 

震えているのはどっちだろう。
伝わってくるのは俺とアテナの震えと、服の上からでも分かるその熱だった。
淡々と語りながら、掴んだ腕から伝わってくる熱を感じていた。
俺が相棒とは違う魂で、相棒がパズルを完成させて蘇った魂であること。
そして、もしかしたら3000年前のファラオかもしれないこと。
名と魂を封じたファラオ。
「信じられないかもしれないが、それが俺の真実だ」
「・・・」
信じられるはずがない。
俺にだって本当なのか理解できないくらいなのだから。
だが、あの石版や手元にある神のカードが、
俺がファラオであったのだと訴えているのだ。
半透明の相棒は気を使ったのか、
アテナを追いかけている途中で心の部屋に戻ってしまっている。
「アテナの悩みを今聞こうという訳じゃない。
 ただ、俺のことを知ってほしかったんだ」
「・・・うん」
「打ち明けて心が軽くなることもあるから、いつでも打ち明けてもらってもいい。
 俺は相棒が居るからこそ、過去と未来の不安があっても存在していられる。
 今の俺は相棒が居るから成り立っているんだ」
「いいね、そういうの」
支え合うのとは少し違う、
一緒に未知なることに挑んで行ける、お互いにそういう存在なのだ。
「私は一人だから・・・」
「違う」
掴んだ腕をもう一度掴み直して、少し引っ張る。
顔を上げさせて俺は揺ぎ無い気持ちで見つめた。
「一人なんかじゃない、俺も居るし相棒も居る。 城之内君達も」
「・・・」
「俺は・・・」
言ってしまえと熱く滾る胸が訴える。
それよりもアテナの悩みを聞くのが先なのに。
「私は・・・いくつに見える?」
「?」
いくつに見える? ・・・随分突拍子も無いことを言い出した。
「いくつって、同じかちょっと上か。 そのくらいに」
「私、本当は25歳なの」
「・・・」
とても25には見えないが・・・。
けれども、良く考えれば俺だって3000歳な訳だ。
「ある日突然変な声が聞こえて、学生時代に身体が戻っちゃって・・・。
 元に戻る手掛かりを探してるの、唯一の手掛かりが私のデッキで、
 だけど何もみつからない・・・私はこのままなのかな?
 ずっとこのままで元に戻らないのかな?
 もしかしたら、歳だって取らないかもしれない・・・どうすればいいの・・・」
俺の話を聞いて止まっていた涙が、悲痛な叫びと共に流れて頬を伝う。
確実に震えているのはアテナだった。
伝わってくるぬくもりと震えを引き寄せて、抱き締めたい衝動に駆られる。
けれども、抱き締めたところで何も変わらないのは事実だ。
「私・・・本当は元に戻りたいと思ってるのに、
 今のままでいいとか思ったりもする。
 皆とデュエルしてると楽しくて、時間を忘れられるし、現実から目を背けていられる」
きっと、言い様の無い葛藤に苛まれていたのだろう。
伝う涙を拭ってあげたい、でも、俺にそれが許されるだろうか。
「信じられないでしょ?」
「そんなことはない」
「だって、こんなこと絶対に有り得ないし・・・」
「俺は信じるぜ」
「!」
びくりと身体を跳ね上げたアテナが俺を見上げる。
薄暗くて一つしかない街頭に照らされたアテナの瞳が濡れて光る。
このまま奪ってしまえたら、どんなに楽だろう。
「もし、私が元に戻ったら・・・皆には会えなくなる」
「何故・・・?」
それこそ分からなかった。
元に戻る事はアテナが望むことなのだから、
それで会えなくなるというのがどう結びついているのか分からない。
「今と全然違うから・・・」
「アテナはアテナだろ」
「・・・」
名前こそ違うけれど、お前はお前だ。
それに、どんなに姿が変わってしまったとしても、俺はアテナのことを・・・。

 

”3000年前に叶わなかった願いを、どうか・・・”

 

「!?」
突然聞こえたあの声。
隣に座るアテナを見ると、アテナも驚いてどこかを見ている。
もしかして、この声が聞こえるのは俺だけじゃないのか?
「もう一人の武藤君・・・今の声・・・」
「以前俺に語りかけてきた声だが・・・。
 アテナの身体が変化した時に聞こえてきた声なのか?」
「・・・うん」
”やっと巡り会えたのですね”
「お前は誰だ!」
”私は・・・”
俺とアテナの前にぼんやりと何かが見えてきた。
そこに立って居たのは、アテナのデッキに入っているアテナと言うモンスター。
ソリッドビジョンは動いて無いと言うか、デュエルディスクでさえ持っていないのに・・・。
何故かそこにモンスターが現れたのだ。
「アテナにそっくり・・・」
”私はアテナです。 3000年前にある方と共に封じられた魂の一部”
現実のアテナが呟いた言葉に答えたカードのアテナ。
俺はふと、何かを感じていた。
彼女のデッキの象徴はアテナであり、それがあったから俺は彼女をアテナと名付けたのだ。
今更気付いたことなのだが、僅かに二人とも似ているのだ。
長い髪に悲しげな表情。
服装こそ違うが、醸し出す雰囲気が似ている。
”ファラオは誓った、交差する未来で幸せになろうと。
 叶わぬ願いは無いのだと・・・私はそれだけを信じて”
ああ・・・。
それで俺にあんなことを・・・。
アテナの生まれ変わりが隣に居る彼女だとしたら、
過去のアテナは何としてでも俺と彼女を引き合わせたかったのだな。
過去、俺がファラオだった時の記憶が無いばかりに、彼女を苦しめてしまったわけだ。
彼女だけじゃない、目の前に現れたアテナのことも。
”私の役目は終わりました、あなたの姿を元に戻します”
「え? ちょ、ちょっと! もしあなたの言ってることが本当だとして、
 そこに私を若返らせる意味があったの?」
悲しげに笑った過去のアテナは、俺と彼女を交互に見て。

 


”私とファラオは同い年だったのです”

 

 

 

続く・・・

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