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飛距離と角度

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2008.11.17
名前変換無しのブログ用王様連載【call a name】07話です。
隠してあるので読みたい方は「つづきを読む」で開いてください。

 

 


call a name 07

 

 

もう一人の武藤君に捕まれた腕が熱い。
あの鋭くも先の読めない瞳は苦手だ。
だけど、あの視線の熱さを私は知っている。
だから逃げた。
例えば、私が彼を好きになって、彼も私のことを好きだったとして、
そこに未来は無い。
私はいずれ元の身体に戻るのだから。
「あーあ、リアルで神の宣告が欲しい・・・」
トラップ発動して、無効にして破壊できれば簡単な話しだ。
異性との関係を経験しているからなのか、そういうことは肌で感じて気付いてしまう。
無駄に歳を取っているみたいで嫌だ。
あの会社で働いて、稼いで生きて、その努力を無駄にしたあの声の主がむかつく。
私の人生返してよ!
無駄に若返ってデュエルしてるだけの私。
本当は自分が一番馬鹿なのは分かってる。
何かしら手掛かりを探しに行けばいいのに、
彼らに甘えて縋って、自分が悲劇のヒロインを演じているなんて。
「馬鹿じゃないの?」
ダメだよね、自分でどうにかしなきゃ未来なんて変えられ無いのに。
元々心の弱い私は、つらいことから逃げてばっかりで周りに甘えていた。
親にも友達にも。
その罰が当たったのかな。
暗くなり始めた夜道を歩きながら、零れた涙が頬を伝って冷たい。
本当は元に戻りたい、でも元に戻ったら彼らとの楽しい時間が終わってしまう。
それって私のワガママだよ。
だからって、どうすればいいの?
未だに元に戻る術は分からないし、戻ったとしても仕事辞めちゃったし。
生きていくためにバイトとかすれば問題ないけど、
そうすると彼らとの繋がりは無くなってしまう。
彼らとの・・・。
もう一人の武藤君との・・・。
「・・・馬鹿みたい!!」
何よ、今更自分の気持ちに気付いたって何の意味も無い。
でも違うんだ、本当は気付いてたのに、ずっと見て見ぬ振りをしてた。
そうじゃなきゃ・・・。
「こんなにも苦しい・・・」
きりりと釣り上がるあの鋭い瞳、どんなカードを使っても勝てないタクティクス。
周りの誰とも違う存在感。
もし私が本当の学生だったら、きっと素直に彼を好きになってた。
でも私は学生じゃない、本当は大人で働いて・・・。
見た目も体型も変わってしまう。
気が付いたら足が止まって立ち尽くし、嗚咽を繰り返して泣いていた。
情けない・・・。
「おい!」
「?!」
誰かに声を掛けられて、ぐいっと腕が強い力に引っ張られ振り向かせられた。
そこに居たのは。
「もう一人の・・・」
「な、何で泣いてる・・・?」
追いかけてきてくれたらしいもう一人の武藤君。
だけど、私が泣いているなんて思ってなかったみたいでビックリしてた。
掴まれた腕が熱い。
キミが動揺するなんて、珍しいモノを見れた。
「ごめん、何でも無い」
「何でも無かったら泣かないだろ」
「・・・私だけの問題だから。 キミには関係無い」
嘘だけど。
薄暗い歩道で二人が固まる、どうすればいいのかなんて分かりきっていた。
「またね」
私は捕まれた腕をそっと離して背を向け・・・。
「待て」
今回ばかりは許してくれそうにない。
今までは何も聞かなかったし、語らなかったのに。
解いた彼の手が、再び私の腕を掴む。
ああもう、やめてよ、その手に縋りたくなるでしょ!!
溢れる涙は止まらない、だから顔を上げられないのに・・・。
彼は強引に空いた手で私の頬に手を添えて、ゆっくりと上向かせる。
「───」
「どうして泣くんだ」
「き、キミには関係・・・」
「あるから聞いてる」
「・・・ある?」
関係あるって、どういうこと・・・?
「アテナが最近落ち込んでいるのは知っていた。
 お前が落ち込んで苦しそうな表情になると、俺までつらくなるんだ。
 だから関係ある」
「・・・」
ドクドクと加速する鼓動は、きっと間近に居るキミにも伝わっているに違いない。
でもね、もっと不思議なのはキミの鼓動も速いってことだよ。
「どうして・・・」
切なそうに言って顔が近づいてきた、私は怖くなって一歩下がる。
キスができそうな距離まで顔が近づいて、私はどうすることも出来ずに固まるしかない。
「俺の話を聞いてくれないか?」
「話し?」
「ああ。 本当の俺のこと」
本当の・・・?
今までが嘘だったとは思えないけど、あまりにも真摯な瞳だったから、私は小さく頷く。
すると、近すぎた距離が徐々に離れていったので安堵の溜め息を心の中で吐き出した。
歩道で話すことでもないと思い、彼に腕を捕まれたまま近くの公園へ移動し、
空いているベンチに腰掛ける。
それでも彼は私の腕を離さなかった。

 


あなたは、本当の私を知っても・・・。 そう願わずには居られない。

 

 

 

続く・・・

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