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飛距離と角度

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2008.11.13
名前変換無しのブログ用王様連載【call a name】03話です。
隠してあるので読みたい方は「つづきを読む」で開いてください。

 

 


call a name 03

 

 

手に持った6枚のカード。
カードショップの前で知り合った男の子を捕まえて、カードのことを詳しく聞いたけど、
元々頭が良くない私には理解するのに時間が掛かって、
それなら実践して覚えようと言うことになり、私は今男の子と向かい合っている。
「あんたのターンだ、分からないことがあったら聞いてくれ」
「って、言われても・・・既に分からないんだけど・・・」
「手に持っているカードを手札と言う、自分のターンでモンスターを場に出したり、
 魔法やトラップをセットすることができる。
 モンスターは4星までそのまま手札から召喚できるしセットもできるが、
 それ以上の星のモンスターは生贄が必要になる」
ある程度のゲームの流れは聞いていたので、
私は手元にある4つ星のモンスターを表で出した。
不安だから魔法もトラップもセットしてしまおう。
「ターンが終わったらエンド宣言をしてくれ」
「じゃあ、エンド」
「何でもかんでもセットすればいいというわけじゃないぜ」
大嵐
「ちょ?! お、鬼ー!!!」
「警戒させるためにセットしたと言うなら見当違いだ、俺はどんな伏せカードにも怯まない」
「そりゃあ、破壊しちゃえば怖くないよね」
「・・・」
ちょっとむすっとしてしまった男の子は、
私が出したモンスターより攻撃力の高いモンスターを場に。
「熟練の黒魔術師を召喚、モンスターに攻撃」
「う、うわ・・・」
そうか、こうやってライフを削ってゲームを進めていくのね。
「俺は一枚魔法トラップゾーンにセットしてターンエンドだ」
私のフィールドはがら空き、デッキと呼ばれるカードの山からカードを引いても、
熟練の黒魔術師を倒せそうなモンスターは来なかった。
守備に回るしかなくて、魔法もトラップも良く分からなくて、結局負けてしまった。
「どうしてトラップを発動させなかったんだ?ミラーフォースを発動すれば良かったのに」
「どうしてって言われても・・・、キミが喋ってる途中で邪魔しちゃ悪いと思って・・・」
「・・・言い方が悪かったようだ、ミラーフォースは相手の攻撃宣言時に発動できる。
 俺が喋っていようが構わず発動させていい。
 もし不安なら発動できるかどうか聞いてくれと言ったはずだ」
「そうだけど・・・」
溜め息が聞こえた。
知らずに身体が強張る。
おかしい、年下の男の子のはずなのに、なんで溜め息一つでこんな・・・。
もしかして私、精神まで子供に戻ってしまったの?
「明日、ここに来れないか?」
「明日?」
「城之内君・・・友達を連れてくるから、俺と友達のデュエルを見れば分かりやすいかと」
そっか! 自分でやるよりも誰かがやっているのを見た方が絶対に分かりやすいよね!
「分かった、明日またこの時間に来るね!」
あ・・・。
鋭い目付きでちょっと怖いかもと思って居た男の子が、ふわりと嬉しそうに笑っていた。
それを見て、有り得ない暖かさが心を覆っているなんて・・・。
私はこの感覚を知っている、伊達に2X年も生きてないよ。
そんなことは無いと頭の中で振り払い、私も笑った。
「そう言えば・・・」
男の子がテーブルに散らばったカードを集めて整えながら、
じっと私を見つめてきた。
「あんたの名前は?」
名前・・・。
どうしてだろう、本名を言う気にはなれないの。
若返ってしまったから本名を言ったところで正体なんてバレないのに。
しかも、隠す必要なんて何も無い。
それなのに・・・。
私は見た目だけでも彼に嘘を付いていることに気付いて、
せっかく教えてもらっているのに嘘を付いて、恩を仇で返している気分になった。
「名前は・・・」
言い渋っていると、男の子はデッキを「トン!」とテーブルで整えて立ち上がった。
「今日はもう遅い、帰った方がいいぜ」
無表情からは何も汲み取れない。
「言いたくないんだろ?」
「そういう訳じゃ・・・」
「別に気にして無い。 俺にも名前は無いからな」
「え?」
彼は遠くを見つめる様に、儚く笑う。
どうして・・・。
どうしてこんなにも胸が痛いんだろう。
恋や愛じゃない、どれにも当てはまらない痛みは、私の知らないモノ。
「そうだ、あんたのデッキを貸してくれ」
「・・・?」
手を差し出されたので彼の手にデッキを乗せると、彼は一枚一枚丁寧に見ていく。
「そうだな・・・天使デッキだし、多分これがあんたのエースモンスターだろうな」
これ、と言いながらデッキから引き抜いたのは、私のデッキで一番綺麗なカード。
「アテナ?」
「そうだ。 これからあんたはアテナだ」
「・・・ええ?! わ、私がアテナ?!」
「俺のことは好きに呼んでくれ」
名前が無いなんて変な人・・・。
でも、名乗れない私にはちょっとありがたかったなんて言えない。
「クリボーでもいいの?」
「・・・」
だって髪型とか髪型とか髪型とか。
それじゃちょっとかわいそうだから。
「普段はなんて呼ばれてるの?」
「・・・武藤遊戯」
え?名前が無いんじゃなかったの?
ちゃんとした名前あるんじゃない。
「じゃあ武藤君で!」
少し、少しだけ、悲しげに笑う。
けれどそれは一瞬のことで、無表情に戻ってしまった。
私は何かいけないことをしたのだろうか?

 


語ろうとしない、聞こうとしない、そんな彼の優しさが嬉しかった。

 

 

 

続く・・・

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